保育士の配置基準(新基準)とは?年齢別の配置基準を施設形態ごとに解説

「配置基準が変わって、うちの園は大丈夫なの?」 「新しい基準で何が変わったの?」
2024年から保育士の配置基準(新基準)が76年ぶりに改正され、保育現場に大きな変化をもたらしています。この変更により、保育の質向上が期待される一方で、人材確保の課題も浮き彫りになっています。
本記事では、保育園経営者や保育士の皆様が知っておくべき配置基準の全てを、年齢別・施設形態別に詳しく解説します。最新の情報を基に、あなたの施設運営に必要な知識をお届けします。
保育士の配置基準とは?基本的な考え方を理解しよう
配置基準とは、保育園において1人の保育士が担当できる子どもの人数を定めた国の基準です。この基準は、子どもたちの安全確保と適切な保育の質を保つために設けられています。
配置基準の重要性は以下の通りです。
- 安全性の確保:適切な大人の目で子どもを見守る
- 保育の質向上:一人ひとりの子どもに丁寧な関わりを提供
- 保育士の負担軽減:過度な負担を防ぎ、働きやすい環境を作る
配置基準違反のリスク
配置基準を満たさない場合、以下のような処分を受ける可能性があります。
- 行政からの改善勧告
- 業務停止命令
- 運営法人名の公開
- 認可の取り消し
- 委託費の減額
これらのリスクを避けるためにも、正確な配置基準の理解が不可欠です。
2024年度改正の背景と主な変更点
改正の背景
保育士の配置基準は、1948年の制定以来、実に76年間変更されていませんでした。しかし、現代の保育ニーズの多様化や保育の質向上への要求の高まりを受け、「異次元の少子化対策」の一環として改正が実現しました。
主な変更点
2024年度より4・5歳児の配置基準が、子ども30人につき保育士1人から、25人につき1人に改正されます。同時に3歳児についても、子ども20人から15人につき1人に変更されました。
改正前後の比較
年齢 | 改正前 | 改正後(2024年〜) | 今後の予定 |
---|---|---|---|
0歳児 | 3人:1人 | 変更なし | – |
1歳児 | 6人:1人 | 変更なし | 2025年度に5人:1人への加算措置 |
2歳児 | 6人:1人 | 変更なし | – |
3歳児 | 20人:1人 | 15人:1人 | – |
4歳児 | 30人:1人 | 25人:1人 | – |
5歳児 | 30人:1人 | 25人:1人 | – |
経過措置について
重要なポイントとして、改正後も経過措置が設けられています。当分の間は従前の基準での運営も認められているため、施設の状況に応じて段階的な対応が可能です。
年齢別配置基準の詳細解説
0歳児クラス:3人につき保育士1人
最も手厚い配置基準が設定されている0歳児クラス。授乳、おむつ替え、離乳食など、個別対応が必要な場面が多いため、この基準が維持されています。
配置のポイント
- 常時2人以上の保育士配置が原則
- 看護師を配置する場合は、一定数まで保育士としてカウント可能
- 安全面への最大限の配慮が必要
1歳児クラス:6人につき保育士1人(2025年度から加算措置あり)
歩行が安定し始める1歳児は、活動範囲が広がる時期です。「園児5人:職員1人以上」に改善している施設に、新たに加算が設けられることになりました。
2025年度の新たな取り組み
- 基準は6人:1人のまま維持
- 5人:1人以上で配置している施設には加算措置
- より手厚い保育体制への支援強化
2歳児クラス:6人につき保育士1人
自我が芽生え、イヤイヤ期を迎える2歳児。個別の対応が特に重要な時期のため、1歳児と同じ配置基準が設定されています。
保育上の注意点
- 個々の発達段階の違いが大きい
- 安全への注意がより一層必要
- トイレトレーニングなど個別対応が重要
3歳児クラス:20人から15人に改善
大幅な改善が図られた3歳児クラス。集団生活のルールを学ぶ重要な時期に、より丁寧な関わりが可能になりました。
改善の効果
- 一人ひとりへのきめ細やかな対応
- 安全管理の向上
- 保育士の負担軽減
4・5歳児クラス:30人から25人に改善
就学前の重要な時期である4・5歳児クラスも5人の改善が実現しました。保育士1人あたりの人数が、5歳児では「30人から25人」へ変更されました。
就学準備への影響
- 学習活動への個別支援充実
- 社会性育成の丁寧な指導
- 一人ひとりの特性に応じた支援
施設形態別の配置基準
認可保育所
最も一般的な認可保育所では、上記の年齢別配置基準がそのまま適用されます。加えて、以下の要件があります:
基本要件
- 園長1人(60人以下の場合は保育士との兼務可能)
- 保育士は有資格者
- 調理員(外部委託の場合は配置不要の場合あり)
認定こども園
認定こども園は保育所機能と幼稚園機能を併せ持つ施設です。配置基準は保育所部分については認可保育所と同様です。
特徴的な要件
- 幼稚園教諭免許も必要な場合あり
- 長時間利用児と短時間利用児への対応
- 教育・保育の両面での質確保
小規模保育事業
定員6〜19人の小規模保育事業は、A型・B型・C型によって配置基準が異なります。
A型(定員6〜19人)
- 保育所と同等の配置基準
- 全職員が保育士資格必要
- 常時2人以上の配置
B型(定員6〜19人)
- 保育所と同等の配置基準
- 職員の1/2以上が保育士
- 残りは研修修了者等
C型(定員6〜10人)
- 家庭的保育者による保育
- 利用児童数に応じた配置
- 家庭的保育者の資格が必要
家庭的保育事業
定員1〜5人の小規模な保育事業です。
配置基準の特徴
- 利用児童3人以下:家庭的保育者1人
- 利用児童4〜5人:家庭的保育者1人+家庭的保育補助者1人
- 家庭的保育者は市町村が実施する研修修了が必要
配置基準の計算方法と実践例
基本的な計算方法
配置基準の計算は、各年齢の園児数を基準数で割って算出します。
計算式
必要保育士数 = 園児数 ÷ 配置基準数(小数点以下切り上げ)
実際の計算例
定員120名の保育園の場合:
・0歳児:5人÷3→保育士2人 ・1歳児:17人÷6→保育士3人 ・2歳児:17人÷6→保育士3人 ・3歳児:20人÷15→保育士1人 ・4歳児:30人÷25→保育士2人 ・5歳児:30人÷25→保育士2人
合計必要保育士数:13人
実務上の注meaning
実際の運営では、以下の点にも注意が必要です:
追加考慮事項
- 園長の兼務状況
- 休暇取得のための代替要員
- 延長保育対応の職員
- 時差出勤への対応
加算措置と処遇改善
2025年度の新たな加算措置
政府はこれらの加算関連費用として、2025年度予算案に109億円を計上する予定です。
主な加算内容
- 1歳児の手厚い配置(5:1)への加算
- 3歳児以上の改善基準達成への加算
- 保育士の処遇改善への支援
財政支援の仕組み
配置基準改善に伴う人件費増加への対応として、国は段階的な財政支援を実施しています。
支援内容
- 人件費相当額の加算
- 段階的な基準引き上げへの配慮
- 地域の実情に応じた柔軟な対応
よくある質問と回答
Q1: 経過措置はいつまで続くの?
A1: 現時点では経過措置の期限は明確に定められていません。各施設の準備状況や人材確保の状況を踏まえ、段階的に移行していく予定です。
Q2: 配置基準を満たせない場合はどうなる?
A2: 改善勧告から始まり、最終的には認可取り消しの可能性もあります。早期の改善計画策定が重要です。
Q3: 看護師は保育士として計算できる?
A3: 一定の条件下で、看護師を保育士として算入することが可能です。詳細は自治体に確認してください。
Q4: パート職員も配置基準に含まれる?
A4: 勤務時間に応じて按分計算されます。フルタイム換算での計算が必要です。
Q5: 年度途中で園児数が変わった場合は?
A5: 月ごとに配置基準を満たす必要があります。園児数の変動に応じて柔軟な対応が求められます。
人材確保のための具体的な対策
採用戦略の見直し
配置基準改善に伴い、より多くの保育士確保が必要になります。
効果的な採用アプローチ
- 働きやすい職場環境のアピール
- 処遇改善の具体的な説明
- キャリアアップ支援の充実
- ワークライフバランスの実現
既存職員の定着対策
新規採用と同時に、既存職員の定着も重要です。
定着率向上のポイント
- 適切な業務分担の実現
- 研修機会の提供
- 職場環境の改善
- 評価制度の充実
地域との連携
人材確保は単独の施設だけでは困難な場合があります。
連携の例
- 近隣施設との情報共有
- 自治体との協力体制
- 養成機関との連携強化
- 潜在保育士の復職支援
今後の展望と課題
2025年度以降の動向
2025年以降には、1歳児についても、子ども6人につき保育士1人の配置が見直され、5人につき1人の改正予定で進められています。
予想される変化
- さらなる配置基準の改善
- 処遇改善の継続的な実施
- 保育の質向上への期待拡大
課題と対応策
主要な課題
- 深刻な保育士不足
- 人件費負担の増加
- 地域格差の拡大
対応の方向性
- 養成機関との連携強化
- 働き方改革の推進
- ICT活用による効率化
- 地域全体での取り組み
まとめ:新基準への適切な対応で保育の質向上を
保育士の配置基準(新基準)は、保育現場に大きな変化をもたらしています。76年ぶりの改正により、子どもたち一人ひとりにより丁寧な関わりが可能になり、保育の質向上が期待されています。
重要なポイントの再確認
- 3歳児:20人→15人、4・5歳児:30人→25人に改善
- 経過措置により段階的な移行が可能
- 2025年度には1歳児への加算措置も開始
- 人材確保が最重要課題
配置基準の改善は、保育現場にとって大きなチャンスです。適切な準備と計画的な対応により、子どもたちにとってより良い保育環境を提供できるでしょう。
人材確保の課題はありますが、国の財政支援や加算措置を活用しながら、着実に新基準への移行を進めていくことが重要です。保育の質向上という大きな目標に向けて、関係者一丸となって取り組んでいきましょう。
次のステップ
- 現在の配置状況の確認
- 新基準への移行計画の策定
- 人材確保戦略の実行
- 継続的な改善の実施
新しい配置基準を適切に運用し、子どもたちの健やかな成長を支える保育環境を実現していきましょう。