保育士の配置基準(新基準)とは?年齢別の配置基準を施設形態ごとに解説

2024年度に76年ぶりの大改正が行われた保育士の配置基準について、詳しく知りたいと考えていませんか。
保育士の配置基準(新基準)とは、子ども何人に対して保育士を1人配置するかを定めた法的なルールです。2024年度から4・5歳児は30対1から25対1へ、3歳児は20対1から15対1へと改善されました。さらに2025年度からは1歳児についても5対1への改善を進める加算措置がスタートしています。
この記事では、保育園の運営者や保育士として働く方、保護者の方に向けて、年齢別・施設形態別の配置基準の詳細から計算方法まで、専門家の視点で網羅的に解説します。
保育士の配置基準とは何か
保育士の配置基準とは、保育施設において子どもの安全と保育の質を確保するために設けられた法的なルールです。具体的には、保育士1人が担当できる子どもの最大人数を定めています。
この基準は1948年(昭和23年)に「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」として制定されました。認可保育園をはじめとする保育施設は、この基準を守らなければ運営することができません。
配置基準の目的は大きく3つあります。1つ目は子どもの安全を守ること、2つ目は質の高い保育を提供すること、3つ目は保育士の適切な労働環境を確保することです。
長年にわたり「時代に合っていない」と指摘されてきた配置基準ですが、2024年度についに76年ぶりの大幅な見直しが実現しました。
2024年度に実施された配置基準の大改正
こども家庭庁の「こども未来戦略」に基づき、2024年度から配置基準の抜本的な見直しが行われました。制度発足以来、一度も改善されてこなかった4・5歳児の基準が初めて変更されたのです。
4・5歳児の配置基準変更
4・5歳児の配置基準は、これまでの子ども30人につき保育士1人から、25人につき1人へと改善されました。これにより保育士1人あたりの負担が軽減され、より細やかな保育が可能になります。
就学前の大切な時期において、一人ひとりの子どもに丁寧に関わる時間が確保できるようになりました。クラス運営にも余裕が生まれ、小学校との連携に必要な記録業務の時間も取りやすくなっています。
3歳児の配置基準変更
3歳児の配置基準も、子ども20人につき保育士1人から、15人につき1人へと改善されました。身の回りの自立が進む一方で、まだまだ手厚いサポートが必要な3歳児に対して、より安全な保育環境が整備されています。
こども家庭庁の調査によると、2024年7月時点で3歳児の15対1を満たしている施設の割合は全体で96.2%に達しています。4・5歳児の25対1についても94.4%の施設が実施しており、新基準への移行は順調に進んでいます。
経過措置について
今回の改正では、人材確保に困難を抱える保育現場への配慮として経過措置が設けられています。当分の間は従前の基準により運営することも認められる内容となっています。
ただし、経過措置の取扱いについては、改善状況を確認しながら今後検討が進められる予定です。
2025年度からの1歳児配置改善加算
2025年度(令和7年度)からは、1歳児の職員配置改善に向けた新たな動きが始まりました。国の最低基準である6対1は維持しつつ、5対1への改善を実施する園には加算措置が設けられます。
1歳児配置改善加算の概要
この加算は、1歳児の配置を5対1以上に改善した施設に対して支給されます。6対1の配置に要する経費と5対1の配置に要する経費との差額に相当する金額が加算される仕組みです。
歩き始めで目が離せない1歳児を6人も保育するのは、現場の負担が大きく事故のリスクも懸念されていました。今回の施策により、より手厚い保育体制の構築が可能になります。
加算取得の要件
1歳児配置改善加算を取得するには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
処遇改善等加算区分1から3の全てを取得していることが1つ目の要件です。2つ目は業務においてICTの活用を進めていることで、具体的には登降園管理ともう1機能以上の機器を導入・活用している必要があります。3つ目は施設・事業所の職員の平均経験年数が10年以上であることです。
加算取得のメリット
この配置改善加算を取得している園で働くことには、保育士にとって大きなメリットがあります。
まず、一人ひとりの子どもに丁寧に関われるようになります。保育士1人あたりの子ども人数が減ることで、個々の発達に合わせたきめ細やかな保育がしやすくなります。
次に、業務負担と心理的ストレスが軽減されます。書類作成などの物理的な負担が減り、心に余裕を持って子どもたちと接することが可能です。
また、ICT導入などで働きやすい環境が整っている傾向があります。加算の要件にICTシステムの活用が含まれているため、業務効率化が進んでいる園である可能性が高いと言えます。
年齢別の保育士配置基準一覧
ここでは、国が定める保育士配置基準を年齢別に詳しく解説します。自治体によっては独自の上乗せ基準がある場合もあるため、所属する地域の基準も確認することをお勧めします。
| 子どもの年齢 | 子どもの人数 | 保育士の人数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 0歳児 | 3人 | 1人 | 1948年から変更なし |
| 1歳児 | 6人(5人) | 1人 | 2025年度から5対1加算措置開始 |
| 2歳児 | 6人 | 1人 | 変更なし |
| 3歳児 | 15人 | 1人 | 2024年度に20対1から改善 |
| 4歳児 | 25人 | 1人 | 2024年度に30対1から改善 |
| 5歳児 | 25人 | 1人 | 2024年度に30対1から改善 |
0歳児の配置基準
0歳児は保育士1人につき子ども3人までと定められています。最も手厚い配置が必要な年齢であり、授乳、オムツ替え、睡眠のチェックなど生命に関わるケアが中心となります。
常に大人の目が必要なため、この基準は1948年の制度発足以来変わっていません。
1歳児の配置基準
1歳児は保育士1人につき子ども6人までが基準です。ただし2025年度からは、5対1に改善した園への加算措置が始まりました。
歩き始めの時期で目が離せない1歳児の保育は、現場の負担が特に大きいとされています。今後は5対1で運営する園が増えることが期待されています。
2歳児の配置基準
2歳児は保育士1人につき子ども6人までです。イヤイヤ期と重なり自己主張が強くなる時期であるため、1歳児と同様に手厚い配置が求められます。
現時点では基準変更の動きはありませんが、今後の検討課題として注目されています。
3歳児の配置基準
3歳児は2024年度から保育士1人につき子ども15人までに改善されました。従来は20人でしたが、活動範囲が広がり友だちとのトラブルも増える時期であることから、より細やかな見守りが必要とされています。
こども家庭庁の調査では、約96%の施設がこの新基準を満たしています。
4・5歳児の配置基準
4・5歳児は2024年度から保育士1人につき子ども25人までに改善されました。従来の30人から5人減少し、就学に向けた準備や集団活動が増える時期に対応しています。
一人ひとりの個性を伸ばすため、配置人数にゆとりが持たされました。
施設形態別の保育士配置基準
保育施設の種類によって配置基準のルールは異なります。自分が働く施設や希望する施設の基準を確認しておきましょう。
認可保育園の配置基準
認可保育園は国が定める配置基準に従う必要があります。基本的な配置基準は年齢別の一覧表の通りです。
開園直後や閉園直前の子どもが少ない時間帯でも、1人以上の子どもを預かっている場合は常に保育士2人以上の配置が必要です。
認可保育園では年1回の立ち入り調査があり、配置基準を満たしていないと改善指導や閉鎖命令の対象となる可能性があります。
幼保連携型認定こども園の配置基準
幼保連携型認定こども園も、基本的には国の配置基準と同じです。
| 子どもの年齢 | 子どもの人数 | 保育士の人数 |
|---|---|---|
| 0歳児 | 3人 | 1人 |
| 1・2歳児 | 6人 | 1人 |
| 3歳児 | 15人 | 1人 |
| 4・5歳児 | 25人 | 1人 |
ただし、満3歳以上の子どもに幼児教育を行う時間は、学級を編成することと専任の保育教諭を配置することが求められます。
認可外保育施設の配置基準
認可外保育施設とは、国からの補助金を受け取っておらず利用者からの保育料で運営される施設です。
保育時間が11時間以内の場合は認可保育園と同一の配置基準が適用されます。保育時間が11時間以上の場合は、保育中の子どもが1人の場合を除き常時2人以上の配置が必要です。
また、職員の3分の1以上が保育士または看護師資格を持っていることが原則となっています。
小規模保育事業の配置基準
小規模保育事業は2015年から国に認められた認可保育所の一つで、0歳から2歳までの子どもを対象としています。定員数は6名から19名で、A型・B型・C型の3つに分類されます。
A型(定員6名から19名)の配置基準
A型は保育所分園やミニ保育所に近い形態です。
| 子どもの年齢 | 子どもの人数 | 保育士の人数 |
|---|---|---|
| 0歳児 | 3人 | 1人 |
| 1・2歳児 | 6人 | 1人 |
保育所の配置基準にプラス1名の配置が必要です。また、職員全員が保育士資格を所有していることが原則となっています。
B型(定員6名から19名)の配置基準
B型はA型とC型の中間型です。
| 子どもの年齢 | 子どもの人数 | 保育士の人数 |
|---|---|---|
| 0歳児 | 3人 | 1人 |
| 1・2歳児 | 6人 | 1人 |
保育所の配置基準にプラス1名が必要で、職員の半数以上が保育士資格を持っていることが求められます。保健師や看護師を保育士とみなす特例も設けられています。
C型(定員6名から10名)の配置基準
C型は家庭的保育に近い形態です。
| 子どもの年齢 | 子どもの人数 | 保育従事者の人数 |
|---|---|---|
| 0歳から2歳児 | 3人 | 家庭的保育者1人 |
| 0歳から2歳児(補助者がいる場合) | 5人 | 2人 |
資格は家庭的保育者所持であれば可能です。
家庭的保育事業の配置基準
家庭的保育事業とは、主に自宅で0歳から2歳までの子どもを5人以下で受け入れる事業です。「保育ママ」とも呼ばれています。
| 子どもの人数 | 保育従事者の人数 |
|---|---|
| 3人 | 家庭的保育者1人 |
| 5人(補助者がいる場合) | 2人 |
事業所内保育事業の配置基準
事業所内保育事業とは、企業で従業員の子どもを預かる保育施設です。0歳から2歳までが対象となっています。
| 定員 | 配置基準 |
|---|---|
| 19人以下 | 小規模保育A型・B型と同様 |
| 20人以上 | 国が定める配置基準と同様 |
20名以上の場合は、上記に加えて1名以上の保育士の配置が必要です。
居宅訪問型保育事業の配置基準
居宅訪問型保育事業とは、ベビーシッターや保育士が子どもの自宅を訪問して1対1で保育を行う事業です。0歳から2歳までが対象です。
子ども1人に対して保育者1人の配置が基準となっています。保育者は自治体が実施する研修を受講・修了した保育士、または同等以上の知識や技術があると市町村長から認められた人である必要があります。
自治体独自の配置基準について
国の配置基準は最低限の基準であり、自治体はそれを上回る独自の基準を設けることができます。保育に力を入れている自治体では、より厳しい基準を設定して保育の質を高めています。
横浜市の配置基準
横浜市では1歳以上の各年齢において国の基準を上回る配置を求めています。1歳児は4人に対し保育士1人、2歳児は5人に対し1人、3歳児は15人に対し1人、4歳以上児は24人に対し1人となっています。
自治体基準を確認する重要性
自分が働く地域や転職を考えている地域の配置基準を事前に確認することが重要です。自治体独自の上乗せ基準がある場合、保育士1人あたりの負担が軽減され、より質の高い保育を提供できる環境が整っている可能性があります。
各自治体のウェブサイトや保育課に問い合わせることで、詳細な基準を確認できます。
保育士配置基準の計算方法
保育士の配置人数を正確に計算することは、適切な園運営のために欠かせません。以下の手順で計算を行います。
ステップ1:年齢ごとの在園児数を確認する
まず、0歳から5歳まで現在保育園に在籍している子どもの人数を年齢別に書き出します。
例えば以下のような在園児数だとします。
- 0歳児:5人
- 1歳児:15人
- 2歳児:15人
- 3歳児:25人
- 4歳児:30人
- 5歳児:30人
ステップ2:在園児数を配置基準で割る
次に、年齢ごとに在園児数を配置基準の数で割り、合計を出します。
| 年齢 | 在園児数 | 配置基準 | 計算結果 |
|---|---|---|---|
| 0歳児 | 5人 | 3人 | 5÷3=1.66 |
| 1歳児 | 15人 | 6人 | 15÷6=2.5 |
| 2歳児 | 15人 | 6人 | 15÷6=2.5 |
| 3歳児 | 25人 | 15人 | 25÷15=1.66 |
| 4歳児 | 30人 | 25人 | 30÷25=1.2 |
| 5歳児 | 30人 | 25人 | 30÷25=1.2 |
| 合計 | – | – | 10.72 |
ステップ3:端数処理と加算
計算結果の合計は10.72となり、端数を繰り上げて11人の保育士が必要となります。
なお、厳密な計算方法は自治体によって異なる場合があります。小数点以下の処理方法や端数の扱いについては、所属する地域の担当課に確認することをお勧めします。
また、延長保育を実施している場合は、その時間帯に対応する保育士の人数も別途加算する必要があります。
配置基準を満たしていない場合のペナルティ
保育士の配置基準を満たさない場合は法令違反となり、段階的な処分が行われます。
段階1:指導監査
認可保育園では年に1度の立ち入り調査が義務付けられています。配置基準を満たしていないと指摘を受けると、特別監査が実施されます。指摘を受けた場合は、改善計画書などの作成・提出が必要です。
段階2:改善勧告
監査後、1か月以内に文書による改善指導が行われます。この期間内に改善が見られない場合、さらに厳しい対応が取られる可能性があります。
段階3:認可取り消しまたは事業停止命令
意図的な違反や長期にわたり改善されない場合は、認可の取り消しや事業停止命令といったペナルティが発生します。これにより園を運営できなくなる可能性があります。
配置基準の緩和措置
保育士不足や待機児童問題に対応するため、2016年から配置基準の一部緩和が実施されています。
子育て支援員の活用
保育所等を8時間以上開所している場合、認可の際に必要となる保育士数を上回る部分については子育て支援員等を活用できます。ただし、子育て支援員が園の職員の3分の1を超えないことが原則です。
朝夕など児童が少数となる時間帯では、保育士2名のうち1名は子育て支援員を活用することも認められています。
幼稚園教諭や小学校教諭の活用
保育士と近接する職種である幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭を保育士の代わりに活用できます。幼稚園教諭は3歳児以上、小学校教諭は5歳児を中心に保育することが望ましいとされています。
これらの職種の方が保育に従事する場合は、子育て支援員研修などの受講が必要です。
看護師・准看護師の活用
乳児4人以上を入所させる保育所では、看護師・保健師・准看護師を1人に限り保育士として活用できます。医療的な知識を持つ職員の活用により、乳児の健康管理体制を強化する目的もあります。
海外との配置基準の比較
日本の保育士配置基準は、国際的に見ても厳しい状況にあると指摘されています。
OECD(経済協力開発機構)のデータによると、参加19か国の中で3歳以上の保育における保育者1人あたりの子ども人数は平均18人でした。一方、日本の保育所では3歳児が15人から20人、4・5歳児が25人から30人と、最も多い水準にあったのです。
海外では保育を教育に一元化する動きが主流となっており、より手厚い人員配置が進んでいます。日本でも今後さらなる配置基準の改善が期待されています。
配置基準の歴史と変遷
保育士の配置基準は、1948年の制度発足以来、段階的に改善されてきました。その歴史を振り返ることで、今回の改正の意義がより明確になります。
1948年から1967年までの変遷
1948年の制度発足当時、1・2歳児は10対1、3歳以上児は30対1という基準でした。その後、中央児童福祉審議会の意見具申を受けて段階的に改善が進み、1967年には1・2歳児が6対1となりました。
1968年から2023年まで
1968年の意見具申で0歳児の3対1が提言され、1998年に正式に基準化されました。3歳児については2015年から公定価格上で15対1への改善が進められましたが、最低基準自体は長く20対1のままでした。
4・5歳児の30対1という基準は、実に76年間一度も改善されることがありませんでした。
2024年以降の新時代
2024年度の改正により、4・5歳児は30対1から25対1へ、3歳児は20対1から15対1へと最低基準が引き上げられました。2025年度からは1歳児の5対1改善に向けた加算措置も開始されています。
こども家庭庁は、エビデンスに基づいた配置基準のさらなる改善を検討していく方針を示しています。
現場の保育士が感じる課題と対処法
配置基準が改善されつつあるとはいえ、現場では依然として課題を感じている保育士も少なくありません。
配置基準に対する現場の声
保育現場からは、現行の配置基準では子どもに十分に目が行き届かないという声が多く聞かれます。特に1・2歳児の6対1については、歩き始めで目が離せない年齢の子どもを6人同時に見ることの困難さが指摘されています。
また、書類作成や保護者対応などの業務も増加しており、純粋に保育に使える時間が限られているという課題もあります。
課題への対処法
配置基準に不満を感じている場合、いくつかの対処法があります。
まず、自治体独自の上乗せ基準がある地域への転職を検討することが一つの選択肢です。国の基準を上回る配置を義務付けている自治体では、保育士1人あたりの負担が軽減されています。
次に、1歳児配置改善加算を取得している園を選ぶことも有効です。この加算を取得している園は、ICT化が進んでいたり職員の経験年数が高かったりと、働きやすい環境が整っている傾向があります。
保育補助者やICTツールを積極的に活用している園を選ぶことも、業務負担軽減につながります。
保育士の配置基準(新基準)と年齢別・施設形態別の要点整理
保育士の配置基準(新基準)について、この記事で解説した重要なポイントを整理します。
2024年度から76年ぶりに配置基準が大幅に改善されました。4・5歳児は30対1から25対1へ、3歳児は20対1から15対1へと変更されています。2025年度からは1歳児の5対1改善に向けた加算措置もスタートしました。
年齢別の現行基準は、0歳児が3対1、1・2歳児が6対1、3歳児が15対1、4・5歳児が25対1です。施設形態によって異なる基準が設けられており、小規模保育事業ではA型・B型・C型でそれぞれ要件が異なります。
配置基準を満たしていない場合は法令違反となり、段階的な処分を経て認可取り消しに至る可能性もあります。一方で、保育士不足に対応するための緩和措置も設けられています。
今後もこども家庭庁を中心に、エビデンスに基づいた配置基準の改善が検討される予定です。保育の質向上と保育士の働きやすさの両立に向けて、制度の改善が続くことが期待されます。
保育園の運営者の方は、自治体の基準も含めて最新情報を確認し、適切な人員配置を行ってください。保育士として働く方は、自分に合った職場環境を選ぶ際の判断材料として、配置基準への対応状況を確認することをお勧めします。
「配置基準が変わって、うちの園は大丈夫なの?」 「新しい基準で何が変わったの?」
2024年から保育士の配置基準(新基準)が76年ぶりに改正され、保育現場に大きな変化をもたらしています。この変更により、保育の質向上が期待される一方で、人材確保の課題も浮き彫りになっています。
保育園経営者や保育士の皆様が知っておくべき配置基準の全てを、年齢別・施設形態別に詳しく解説します。
保育士の配置基準とは?基本的な考え方を理解しよう
配置基準とは、保育園において1人の保育士が担当できる子どもの人数を定めた国の基準です。この基準は、子どもたちの安全確保と適切な保育の質を保つために設けられています。
配置基準の重要性は以下の通りです。
- 安全性の確保:適切な大人の目で子どもを見守る
- 保育の質向上:一人ひとりの子どもに丁寧な関わりを提供
- 保育士の負担軽減:過度な負担を防ぎ、働きやすい環境を作る
配置基準違反のリスク
配置基準を満たさない場合、以下のような処分を受ける可能性があります。
- 行政からの改善勧告
- 業務停止命令
- 運営法人名の公開
- 認可の取り消し
- 委託費の減額
これらのリスクを避けるためにも、正確な配置基準の理解が不可欠です。
2024年度改正の背景と主な変更点
改正の背景
保育士の配置基準は、1948年の制定以来、実に76年間変更されていませんでした。しかし、現代の保育ニーズの多様化や保育の質向上への要求の高まりを受け、「異次元の少子化対策」の一環として改正が実現しました。
主な変更点
2024年度より4・5歳児の配置基準が、子ども30人につき保育士1人から、25人につき1人に改正されます。同時に3歳児についても、子ども20人から15人につき1人に変更されました。
改正前後の比較
| 年齢 | 改正前 | 改正後(2024年〜) | 今後の予定 |
|---|---|---|---|
| 0歳児 | 3人:1人 | 変更なし | – |
| 1歳児 | 6人:1人 | 変更なし | 2025年度に5人:1人への加算措置 |
| 2歳児 | 6人:1人 | 変更なし | – |
| 3歳児 | 20人:1人 | 15人:1人 | – |
| 4歳児 | 30人:1人 | 25人:1人 | – |
| 5歳児 | 30人:1人 | 25人:1人 | – |
経過措置について
重要なポイントとして、改正後も経過措置が設けられています。当分の間は従前の基準での運営も認められているため、施設の状況に応じて段階的な対応が可能です。
年齢別配置基準の詳細解説
0歳児クラス:3人につき保育士1人
最も手厚い配置基準が設定されている0歳児クラス。授乳、おむつ替え、離乳食など、個別対応が必要な場面が多いため、この基準が維持されています。
配置のポイント
- 常時2人以上の保育士配置が原則
- 看護師を配置する場合は、一定数まで保育士としてカウント可能
- 安全面への最大限の配慮が必要
1歳児クラス:6人につき保育士1人(2025年度から加算措置あり)
歩行が安定し始める1歳児は、活動範囲が広がる時期です。「園児5人:職員1人以上」に改善している施設に、新たに加算が設けられることになりました。
2025年度の新たな取り組み
- 基準は6人:1人のまま維持
- 5人:1人以上で配置している施設には加算措置
- より手厚い保育体制への支援強化
2歳児クラス:6人につき保育士1人
自我が芽生え、イヤイヤ期を迎える2歳児。個別の対応が特に重要な時期のため、1歳児と同じ配置基準が設定されています。
保育上の注意点
- 個々の発達段階の違いが大きい
- 安全への注意がより一層必要
- トイレトレーニングなど個別対応が重要
3歳児クラス:20人から15人に改善
大幅な改善が図られた3歳児クラス。集団生活のルールを学ぶ重要な時期に、より丁寧な関わりが可能になりました。
改善の効果
- 一人ひとりへのきめ細やかな対応
- 安全管理の向上
- 保育士の負担軽減
4・5歳児クラス:30人から25人に改善
就学前の重要な時期である4・5歳児クラスも5人の改善が実現しました。保育士1人あたりの人数が、5歳児では「30人から25人」へ変更されました。
就学準備への影響
- 学習活動への個別支援充実
- 社会性育成の丁寧な指導
- 一人ひとりの特性に応じた支援
施設形態別の配置基準
認可保育所
最も一般的な認可保育所では、上記の年齢別配置基準がそのまま適用されます。加えて、以下の要件があります:
基本要件
- 園長1人(60人以下の場合は保育士との兼務可能)
- 保育士は有資格者
- 調理員(外部委託の場合は配置不要の場合あり)
認定こども園
認定こども園は保育所機能と幼稚園機能を併せ持つ施設です。配置基準は保育所部分については認可保育所と同様です。
特徴的な要件
- 幼稚園教諭免許も必要な場合あり
- 長時間利用児と短時間利用児への対応
- 教育・保育の両面での質確保
小規模保育事業
定員6〜19人の小規模保育事業は、A型・B型・C型によって配置基準が異なります。
A型(定員6〜19人)
- 保育所と同等の配置基準
- 全職員が保育士資格必要
- 常時2人以上の配置
B型(定員6〜19人)
- 保育所と同等の配置基準
- 職員の1/2以上が保育士
- 残りは研修修了者等
C型(定員6〜10人)
- 家庭的保育者による保育
- 利用児童数に応じた配置
- 家庭的保育者の資格が必要
家庭的保育事業
定員1〜5人の小規模な保育事業です。
配置基準の特徴
- 利用児童3人以下:家庭的保育者1人
- 利用児童4〜5人:家庭的保育者1人+家庭的保育補助者1人
- 家庭的保育者は市町村が実施する研修修了が必要
配置基準の計算方法と実践例
基本的な計算方法
配置基準の計算は、各年齢の園児数を基準数で割って算出します。
計算式
必要保育士数 = 園児数 ÷ 配置基準数(小数点以下切り上げ)
実際の計算例
定員120名の保育園の場合:
・0歳児:5人÷3→保育士2人 ・1歳児:17人÷6→保育士3人 ・2歳児:17人÷6→保育士3人 ・3歳児:20人÷15→保育士1人 ・4歳児:30人÷25→保育士2人 ・5歳児:30人÷25→保育士2人
合計必要保育士数:13人
実務上の注meaning
実際の運営では、以下の点にも注意が必要です:
追加考慮事項
- 園長の兼務状況
- 休暇取得のための代替要員
- 延長保育対応の職員
- 時差出勤への対応
加算措置と処遇改善
2025年度の新たな加算措置
政府はこれらの加算関連費用として、2025年度予算案に109億円を計上する予定です。
主な加算内容
- 1歳児の手厚い配置(5:1)への加算
- 3歳児以上の改善基準達成への加算
- 保育士の処遇改善への支援
財政支援の仕組み
配置基準改善に伴う人件費増加への対応として、国は段階的な財政支援を実施しています。
支援内容
- 人件費相当額の加算
- 段階的な基準引き上げへの配慮
- 地域の実情に応じた柔軟な対応
よくある質問と回答
Q1: 経過措置はいつまで続くの?
A1: 現時点では経過措置の期限は明確に定められていません。各施設の準備状況や人材確保の状況を踏まえ、段階的に移行していく予定です。
Q2: 配置基準を満たせない場合はどうなる?
A2: 改善勧告から始まり、最終的には認可取り消しの可能性もあります。早期の改善計画策定が重要です。
Q3: 看護師は保育士として計算できる?
A3: 一定の条件下で、看護師を保育士として算入することが可能です。詳細は自治体に確認してください。
Q4: パート職員も配置基準に含まれる?
A4: 勤務時間に応じて按分計算されます。フルタイム換算での計算が必要です。
Q5: 年度途中で園児数が変わった場合は?
A5: 月ごとに配置基準を満たす必要があります。園児数の変動に応じて柔軟な対応が求められます。
人材確保のための具体的な対策
採用戦略の見直し
配置基準改善に伴い、より多くの保育士確保が必要になります。
効果的な採用アプローチ
- 働きやすい職場環境のアピール
- 処遇改善の具体的な説明
- キャリアアップ支援の充実
- ワークライフバランスの実現
既存職員の定着対策
新規採用と同時に、既存職員の定着も重要です。
定着率向上のポイント
- 適切な業務分担の実現
- 研修機会の提供
- 職場環境の改善
- 評価制度の充実
地域との連携
人材確保は単独の施設だけでは困難な場合があります。
連携の例
- 近隣施設との情報共有
- 自治体との協力体制
- 養成機関との連携強化
- 潜在保育士の復職支援
今後の展望と課題
2025年度以降の動向
2025年以降には、1歳児についても、子ども6人につき保育士1人の配置が見直され、5人につき1人の改正予定で進められています。
予想される変化
- さらなる配置基準の改善
- 処遇改善の継続的な実施
- 保育の質向上への期待拡大
課題と対応策
主要な課題
- 深刻な保育士不足
- 人件費負担の増加
- 地域格差の拡大
対応の方向性
- 養成機関との連携強化
- 働き方改革の推進
- ICT活用による効率化
- 地域全体での取り組み
まとめ:新基準への適切な対応で保育の質向上を
保育士の配置基準(新基準)は、保育現場に大きな変化をもたらしています。76年ぶりの改正により、子どもたち一人ひとりにより丁寧な関わりが可能になり、保育の質向上が期待されています。
重要なポイントの再確認
- 3歳児:20人→15人、4・5歳児:30人→25人に改善
- 経過措置により段階的な移行が可能
- 2025年度には1歳児への加算措置も開始
- 人材確保が最重要課題
配置基準の改善は、保育現場にとって大きなチャンスです。適切な準備と計画的な対応により、子どもたちにとってより良い保育環境を提供できるでしょう。
人材確保の課題はありますが、国の財政支援や加算措置を活用しながら、着実に新基準への移行を進めていくことが重要です。保育の質向上という大きな目標に向けて、関係者一丸となって取り組んでいきましょう。
次のステップ
- 現在の配置状況の確認
- 新基準への移行計画の策定
- 人材確保戦略の実行
- 継続的な改善の実施
新しい配置基準を適切に運用し、子どもたちの健やかな成長を支える保育環境を実現していきましょう。
