保育士の離職率はなぜ高い?長く続けるための工夫とは

保育士の離職率は本当に高いのでしょうか。「子どもが好きで保育士になったのに、辞めたい」と感じている方は少なくありません。厚生労働省のデータによると、保育士全体の離職率は9.3%であり、全産業平均の15.0%と比較すると決して高くはありません。しかし、私立保育園に限定すると10.7%となり、公立の5.9%と比べて約2倍近い差があります。

本記事では、保育士の離職率に関する最新データを詳しく分析します。さらに、退職理由のランキングや長く働き続けるための具体的な工夫についても解説します。これから保育士を目指す方や、現在の職場に不安を感じている方にとって、キャリアを考えるヒントになれば幸いです。

目次

保育士の離職率は本当に高いのか?最新データで検証

保育士の離職率については、さまざまな情報が飛び交っています。「保育士は離職率が高い」というイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、実際のデータを見ると、必ずしもそうとは言い切れません。

保育士全体の離職率は9.3%

厚生労働省が発表した「保育の現場・職業の魅力向上検討会」の資料によると、保育士全体の離職率は9.3%です。この数値は2017年の調査結果ですが、2023年度のデータでも大きな変動はなく、8.44%程度で推移しています。

全国には約69万人の保育士が働いています。9.3%ということは、毎年約5.5万人が退職している計算になります。決して少ない数字ではありませんが、他の産業と比較すると極端に高いわけではありません。

公立と私立で異なる離職率

保育士の離職率は、公立保育園と私立保育園で大きく異なります。

区分離職率
保育士全体9.3%
公立保育園5.9%
私立保育園10.7%

公立保育園で働く保育士は地方公務員として採用されます。給与や福利厚生が安定しているため、離職率が低くなっています。一方、私立保育園は園によって待遇や保育方針が大きく異なります。そのため、ミスマッチが起きやすく、離職につながるケースが多いのです。

新卒保育士の1年以内離職率は約8%

2023年に新卒で保育士として入職した方のうち、1年以内に退職した割合は全体で8.13%です。内訳を見ると、公立が2.24%、私立が9.68%となっています。私立は公立の約4倍以上の離職率であり、働く環境によって大きな差があることがわかります。

3年以内・5年以内の離職率は?

保育士の3年以内離職率に関する公的なデータは明確には存在しません。しかし、厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」によると、保育士が含まれる「医療、福祉」分野の3年以内離職率は40.8%となっています。

また、保育士として勤務した方の5年以内離職率は約42.2%という調査結果もあります。現職の保育士の約半数が経験年数6年未満であることからも、早期離職の傾向が見て取れます。

他業種との比較

保育士の離職率を他のサービス業と比較してみましょう。

産業分野離職率
宿泊業・飲食サービス業26.6%
生活関連サービス業・娯楽業18.7%
サービス業(他に分類されないもの)15.6%
医療、福祉(保育士含む)13.8%
全産業平均15.0%

この表を見ると、保育士が含まれる「医療、福祉」分野は、他のサービス業と比較して離職率が低いことがわかります。国の処遇改善施策や借り上げ社宅制度などが、保育士の定着率向上に貢献していると考えられます。

保育士が退職する理由ランキングTOP5

保育士の離職率が数値上はそれほど高くないとしても、「辞めたい」と感じている方は多いのが現実です。東京都福祉保健局の調査によると、退職意向のある保育士が挙げる理由には明確な傾向があります。

1位 職場の人間関係(33.5%)

保育士の退職理由で最も多いのが「職場の人間関係」です。約3人に1人がこの理由を挙げています。

保育現場は少人数の固定メンバーで長時間一緒に過ごします。そのため、一度人間関係がこじれると修復が難しくなります。先輩保育士からの厳しい指導や、情報共有がうまくいかない環境では、日々の出勤が苦痛になってしまいます。

女性が多い職場特有の難しさもあります。派閥ができやすかったり、コミュニケーションが複雑化したりすることもあるでしょう。相談できる相手がいないと、一人で悩みを抱え込んでしまいがちです。

2位 給料が安い(29.2%)

約3割の保育士が給与面への不満を退職理由に挙げています。保育士の仕事は、子どもの命を預かる責任の重い仕事です。それにもかかわらず、業務量に見合った報酬を得られていないと感じる方が多いのです。

厚生労働省のデータによると、保育士の平均年収は約407万円です。全産業の平均年収と比較すると、やや低い水準にあります。特に一人暮らしをしている保育士にとっては、生活に余裕がないと感じることも少なくありません。

近年は処遇改善加算制度によって給与水準が上がってきています。2025年度からは処遇改善等加算が一本化され、より分かりやすい仕組みになりました。しかし、園によって手当の配分が異なるため、期待したほど年収が上がらないケースもあります。

3位 仕事量が多い(27.7%)

保育士の業務は多岐にわたります。子どもの見守りだけでなく、指導案の作成、連絡帳の記入、行事の企画・準備、壁面制作など、やるべきことが山積みです。

勤務時間内に仕事が終わらず、持ち帰り仕事が発生することも珍しくありません。サービス残業が常態化している園もあり、プライベートの時間が確保できないという声も聞かれます。

日中は保育に追われ、事務作業は午睡の間か閉園後に行うことになります。行事前は準備のために残業が当たり前になり、休日も体が休まらないという状況に陥りやすいのです。

4位 労働時間が長い(24.9%)

仕事量の多さと関連して、労働時間の長さも大きな退職理由となっています。早朝から夕方まで子どもと過ごし、その後に事務作業を行う毎日。体力的にも精神的にも消耗してしまいます。

シフト勤務による不規則な生活リズムも負担となります。早番や遅番が続くと、自分の時間を確保するのが難しくなります。結婚や出産を機に、働き方の見直しを考える方も多いでしょう。

5位 健康上の理由・体力的な理由

保育士の仕事は身体的な負担が大きい職業です。子どもを抱っこしたり、しゃがんだり立ったりを繰り返す動作は、腰や膝に大きな負担をかけます。

また、子どもから感染症をもらいやすい環境でもあります。風邪やインフルエンザ、胃腸炎などに罹患するリスクが高く、体調管理が難しいと感じる方も少なくありません。

年齢を重ねるにつれて体力の衰えを感じ、「いつまで続けられるだろうか」という不安を抱える方もいます。

保育士の離職率が高い園の特徴と見分け方

すべての保育園の離職率が高いわけではありません。離職率の高い園には共通する特徴があります。転職や就職の際には、これらのサインを見逃さないようにしましょう。

常に求人が出ている

年間を通じて常に求人を出している園は要注意です。「大量募集」を繰り返している場合も同様です。人が定着しない何らかの理由があると考えられます。

求人サイトで気になる園を見つけたら、過去の求人履歴を確認してみましょう。頻繁に募集をかけている園は、離職率が高い可能性があります。

職員の年齢層に偏りがある

園見学の際に、職員の年齢層を観察してみてください。若手ばかりで中堅・ベテランがいない園は、長く働き続けられない環境かもしれません。

逆に、ベテランばかりで若手が定着していない園も問題です。世代間のギャップや、新人への指導体制に課題がある可能性があります。

職員の表情が暗い

園見学や面接時に、職員の表情や態度を観察しましょう。笑顔がなく、ピリピリした雰囲気の園は、職場環境に問題を抱えている可能性があります。

職員同士の会話の様子もチェックポイントです。コミュニケーションがうまく取れていないようであれば、人間関係に課題があるかもしれません。

園見学を断られる

園見学を申し込んだ際に、理由なく断られる場合は注意が必要です。見せられない何かがある可能性があります。

見学を快く受け入れてくれる園は、自園の環境に自信を持っています。オープンな姿勢は、働きやすい職場の証拠とも言えるでしょう。

残業に関する説明があいまい

面接時に残業について質問した際、明確な回答が得られない場合は要注意です。「繁忙期は多少あります」といったあいまいな表現には、実際はかなりの残業が発生している可能性があります。

固定残業代(みなし残業)が設定されている場合は、含まれている時間数を必ず確認しましょう。

保育士として長く続けるための7つの工夫

保育士の仕事を長く続けるためには、自分自身でできる工夫も大切です。ここでは、現役保育士の声を参考に、長く働き続けるためのポイントをご紹介します。

1. オンとオフを明確に切り替える

仕事とプライベートの境界線を明確にすることが大切です。「休みの日は必ず1人の時間を作る」「仕事とは関係ないことに没頭する」など、自分なりのルールを設けましょう。

持ち帰り仕事をできるだけ減らす工夫も必要です。勤務時間内に効率よく業務をこなすスキルを身につけることで、プライベートの時間を確保できます。

2. 信頼できる相談相手を見つける

職場内外に相談できる相手を持つことは、メンタルヘルスの維持に欠かせません。同僚や先輩、同じ保育士の友人など、気軽に話せる存在がいると心強いです。

愚痴を言い合えるだけでなく、客観的なアドバイスをもらえる関係性が理想的です。転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談するのも一つの方法です。

3. 体調管理を徹底する

保育士を長く続けるためには、心身の健康が土台となります。十分な睡眠時間の確保、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけましょう。

理想的な睡眠時間は7〜8時間です。難しい場合でも、休日に寝溜めをするなど、睡眠負債を解消する工夫をしてみてください。

腰痛予防のストレッチや、正しい抱っこの姿勢を身につけることも大切です。体を壊してからでは遅いので、日頃から予防を意識しましょう。

4. ストレス発散方法を複数持つ

自分なりのストレス発散方法をいくつか持っておくことが重要です。趣味の時間を大切にしたり、友人と会う機会を作ったりしましょう。

即効性のあるストレス解消法として、深呼吸やマインドフルネスも有効です。深い呼吸を意識的に行うことで、自律神経のバランスが整い、心身がリラックスします。

お湯にゆっくり浸かる入浴タイムもおすすめです。忙しいとシャワーで済ませがちですが、湯船に浸かることで疲れが取れやすくなります。

5. キャリアアップの目標を設定する

短期および長期の目標を設定することで、モチベーションを維持しやすくなります。「◯年後には主任になりたい」「この研修を受けてスキルアップしたい」など、具体的な目標を持ちましょう。

保育士には、副主任保育士や専門リーダーなどのキャリアパスが用意されています。処遇改善加算の制度を活用すれば、役職に就くことで給与アップも期待できます。

6. 雇用形態を見直す

ライフステージに合わせて、雇用形態を見直すことも選択肢の一つです。正社員での勤務が難しい場合は、パートや派遣として働く方法もあります。

時短勤務や扶養内勤務など、柔軟な働き方ができる園も増えています。無理をして正社員を続けるよりも、自分に合った働き方を選ぶことで、長く保育の仕事を続けられます。

7. 職場環境が合わなければ転職を検討する

どうしても今の職場で働き続けることが難しい場合は、転職を検討しましょう。保育士の有効求人倍率は2.77倍と高く、転職先を見つけやすい状況にあります。

「人間関係が原因で辞めるのは甘え」と感じる方もいるかもしれません。しかし、保育士の退職理由で最も多いのが人間関係です。自分に合った園を見つけることは、決して甘えではありません。

離職率の低い保育園の選び方

転職や就職の際に、離職率の低い園を選ぶことで、長く働ける可能性が高まります。ここでは、働きやすい園を見分けるポイントをご紹介します。

園見学で人間関係を確認する

園見学は、職場の雰囲気を知る絶好の機会です。見学の際は、以下のポイントをチェックしましょう。

まず、そこで働いている保育士の表情や言葉遣いに注目します。自然な笑顔で対応してくれる園は、人間関係が良好な可能性が高いです。職員同士のやり取りが見られれば、コミュニケーションの様子も確認できます。

子どもの様子も重要なチェックポイントです。子どもたちが笑顔で過ごしている園は、保育の質が高く、職員にも余裕があると考えられます。

SNSやブログで園の雰囲気をつかむ

最近は、SNSやブログで情報発信している園が増えています。行事の様子や日常の保育風景から、園の雰囲気を知ることができます。

職員の紹介ページがある場合は、勤続年数や職員のコメントにも注目しましょう。長く働いている職員が多い園は、働きやすい環境が整っている証拠です。

処遇改善手当の活用状況を確認する

国からの処遇改善加算をどのように配分しているか確認しましょう。処遇改善手当は園によって配分が異なります。

2025年度からは処遇改善等加算が一本化され、区分1で月額12,000円〜38,000円程度、区分3で月額5,000円〜40,000円程度が支給される仕組みになりました。これらの手当がしっかり保育士に還元されているか確認することが大切です。

借り上げ社宅制度の有無を確認する

自治体が実施している「宿舎借り上げ支援事業」を活用している園は、職員の生活を支える意識が高いと言えます。家賃月額82,000円を上限に助成される制度で、一人暮らしの保育士には大きなメリットとなります。

この制度をフル活用している園を選ぶことで、手取り額を大幅に増やすことができます。

ICT化の進み具合を確認する

連絡帳や登降園の管理、日誌の作成をタブレットやパソコンで行っている園は、業務効率化に積極的です。手書きに比べて作業時間が大幅に短縮されるため、残業を減らす効果があります。

国も保育現場のICT化を推進しています。デジタル化が進んでいる園は、職員の負担軽減に本気で取り組んでいると考えられます。

オープニングスタッフの求人を探す

新しくオープンする園では、人間関係がまだできあがっていません。転職してもすぐに馴染みやすく、それまでの慣習にしばられずに働き始められます。

全員が横一線のスタートになるため、人間関係がうまくいく可能性が高いです。新規オープン園の求人は人気が高いので、見つけたら早めに応募しましょう。

保育士資格を活かせる保育園以外の職場

「保育士は続けたいけど、保育園では働きたくない」という方もいるでしょう。保育士資格を活かして働ける職場は、保育園だけではありません。

児童発達支援施設・放課後等デイサービス

障がいのある子どもや発達に特性のある子どもを対象とした施設です。少人数のグループを複数の職員で担当するため、子どもの変化を細かく見守ることができます。

療育の経験がなくても、保育士として働くことができます。専門的な知識が身につき、保育士としてのスキルの幅が広がります。児童発達支援管理責任者としてのキャリアアップも目指せます。

放課後児童クラブ(学童保育)

小学生を対象に、放課後や長期休暇中の居場所を提供する施設です。主な勤務時間が午後からのため、午前中の時間を有効に使いたい方に向いています。

幼児期とは異なる学童期の成長を支えるやりがいを感じられます。放課後児童支援員としてのキャリアアップも可能です。

小規模保育所

0歳〜2歳児を対象とした、定員19名以下の施設です。家庭的な雰囲気の中で、一人ひとりとじっくり向き合う保育ができます。

大規模園に比べて園児数が少ないため、アットホームな環境で働けます。0〜2歳児が対象のため、運動会などの大規模行事が少ないのも特徴です。

企業内保育所・病院内保育所

企業の従業員や病院の職員の子どもを預かる施設です。定員が少人数で行事が少ない園も多く、日々の業務負担が比較的穏やかです。

大企業や病院が運営している施設は、福利厚生が充実している場合があります。夜勤や土日勤務がある場合もありますが、手当が充実していることも多いです。

保育士の処遇改善と今後の展望

保育士の離職を防ぐため、国はさまざまな処遇改善施策を進めています。最新の制度と今後の見通しについて解説します。

処遇改善等加算制度の一本化

2025年度から、従来の「処遇改善加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」が「区分1〜3」に一本化されました。制度が簡素化され、より分かりやすい仕組みになっています。

区分1では、経験年数や研修受講に応じて月額12,000円〜38,000円程度が加算されます。区分2は副主任保育士や専門リーダーを対象に月額約40,000円、区分3はすべての保育士を対象に月額約9,000円が支給されます。

人件費の引き上げ

2025年度には、保育所等に支払われる公定価格のうち人件費部分が10.7%引き上げられました。これは過去最大の引き上げ幅です。2026年度もさらに5.3%の引き上げが予定されています。

保育士の給与水準は着実に改善されてきています。今後も継続的な処遇改善が期待されます。

自治体独自の支援制度

国の制度に加えて、自治体独自の支援制度も充実してきています。東京都では、国の加算に加えて月額約9,000円相当の賃金改善補助があります。また、キャリアアップ補助事業として、研修修了者やリーダー職を対象に月額40,000円を上限とした支給も行われています。

宿舎借り上げ支援も継続されており、事業者が保育士の宿舎を借り上げた場合、家賃月額82,000円を上限に助成されます。

保育士の離職率を下げるために園ができること

保育士の離職を防ぐためには、園側の取り組みも欠かせません。経営者や管理者の方に向けて、離職率を下げるためのポイントをご紹介します。

人間関係を良好に保つ仕組みづくり

風通しの良い職場づくりが重要です。定期的な面談の実施や、気軽に相談できる体制の整備が効果的です。

新人保育士にはメンター制度を導入し、孤立しないようサポートしましょう。先輩保育士との関係性が、早期離職を防ぐカギとなります。

業務負担の軽減

ICTツールの導入により、事務作業の効率化を図りましょう。連絡帳のデジタル化や、登降園管理のシステム化により、保育士の負担を大幅に軽減できます。

行事の見直しも検討してください。大規模な行事を縮小し、日常の保育を重視することで、残業や持ち帰り仕事を減らせます。

適切な評価と報酬

処遇改善加算を職員に適切に配分しましょう。頑張りが報酬に反映される仕組みがあると、モチベーションが維持しやすくなります。

残業代を1分単位で支給することも、職員への誠意の表れです。サービス残業をなくし、適切な労働対価を支払いましょう。

キャリアパスの明示

職員がキャリアアップの道筋を描けるよう、キャリアパスを明示しましょう。主任保育士や副主任への昇進要件、研修制度について、入職時から説明することが大切です。

将来の見通しが立つことで、長く働き続けるモチベーションにつながります。

保育士の離職率と長く続けるコツ

保育士の離職率は全体で9.3%と、他業種と比較して特別高いわけではありません。しかし、私立保育園に限ると10.7%であり、公立の約2倍近い離職率となっています。退職理由の上位は「人間関係」「給料の安さ」「仕事量の多さ」で、これらは園選びの際に確認すべきポイントでもあります。

保育士として長く働き続けるためには、自分に合った職場を選ぶことが大切です。園見学で雰囲気を確認し、処遇改善手当の活用状況や残業の実態を把握しましょう。また、オンとオフの切り替え、体調管理、ストレス発散など、自分自身でできる工夫も重要です。

現在は保育士の有効求人倍率が2.77倍と高く、よりよい条件の園を選びやすい状況にあります。処遇改善施策も着実に進んでおり、保育士の働く環境は改善傾向にあります。子どもたちの成長に関われるやりがいのある仕事だからこそ、長く続けられる環境を見つけてください。

保育士の離職率の高さが社会問題となっています。子どもたちの成長を支える大切な職業なのに、なぜ多くの保育士が離職してしまうのでしょうか。

この記事では、保育士の離職率はなぜ高いのかという疑問に答えながら、長く続けるための具体的な工夫をご紹介します。現役保育士の方はもちろん、保育士を目指す方にも役立つ情報をお届けします。

保育士の離職率の現状

最新の離職率データ

保育士の離職率は全体で9.0%となっています。これは全産業平均と比較すると、決して極端に高い数値ではありません。

しかし、注目すべきは施設種別による差の大きさです。

施設種別離職率
公立保育園5.9%
私立保育園10.7%
幼稚園教諭10.6%

公立保育園の離職率は5.9%と低めですが、私立保育園では10.7%と約2倍の差があります。

なぜ保育士の離職率が「高い」と言われるのか

保育業界は人手不足や潜在保育士の問題がメディアで取り上げられることが多く、離職率が高いイメージを持たれているかもしれません。

実際には産業全体で見ると高くはないものの、以下の理由で問題視されています。

  • 慢性的な人手不足の深刻化
  • 子どもの命を預かる責任の重さ
  • 代替要員確保の困難さ

保育士が退職する主な理由とは

1. 給料が安い(61.6%)

最も多い理由は61.6%の「給料が安い」です。保育士の給料に関する問題は深刻で、多くの保育士が以下の不満を抱えています。

給料面での主な不満

  • 業務量に見合わない賃金水準
  • 他業種との収入格差
  • 昇給の少なさ
  • 副業制限による収入向上の困難

2. 仕事量の多さと労働時間の長さ

「仕事量が多い」ことを辞めたい理由としてあげた保育士が69.8%、「労働時間が長い」ことを理由とした割合は56.6%でした。

具体的な業務負担

  • 日中の保育業務
  • 大量の書類作成
  • 行事の準備・運営
  • 保護者対応
  • 研修参加

3. 職場の人間関係(38.0%)

職場を辞めた理由の1位は「職場の人間関係」で38.0%となっています。

人間関係の問題

  • 先輩・後輩間のコミュニケーション不足
  • 保護者との関係性
  • 職場内のいじめやハラスメント
  • 価値観の違いによる対立

4. その他の退職理由

  • 体力的な負担(腰痛、声枯れなど)
  • 精神的なストレス(責任の重さ)
  • キャリアアップの機会の少なさ
  • 他業種への興味

公立保育園と私立保育園の離職率の違い

公立保育園の特徴(離職率5.9%)

安定した労働環境

  • 公務員としての身分保障
  • 安定した給与体系
  • 充実した福利厚生
  • 明確な昇進・昇格制度

私立保育園の課題(離職率10.7%)

園による格差の存在

  • 給与水準のばらつき
  • 福利厚生の差
  • 労働環境の違い
  • 経営方針による影響

私立保育園では園によって保育士の給料や待遇、福利厚生の手厚さなどにかなりバラつきがあり、仕事量に対して給料が見合っていないと感じる保育士が多くなっています。

保育士が長く続けるための具体的な工夫

個人レベルでできる対策

1. スキルアップと資格取得

専門性を高める取り組み

  • 幼児教育関連の研修参加
  • 保育に関する資格の追加取得
  • 専門書籍の読書
  • 同業者との情報交換

2. ストレス管理と体調管理

心身の健康維持

  • 定期的な運動習慣
  • 十分な睡眠時間の確保
  • 趣味やリフレッシュ活動
  • カウンセリングの活用

3. 人間関係の構築

良好な関係性の築き方

  • 積極的なコミュニケーション
  • 相互理解と尊重
  • 感謝の気持ちの表現
  • 建設的な意見交換

職場選びのポイント

1. 労働条件の確認

事前にチェックすべき項目

  • 基本給と各種手当
  • 労働時間と残業の実態
  • 有給取得率
  • 福利厚生の内容

2. 職場環境の見学

実際に確認したい要素

  • 職員同士の雰囲気
  • 子どもたちの様子
  • 施設の設備状況
  • 業務の効率化状況

3. 園の理念と方針

長期勤務に重要な要素

  • 教育理念への共感
  • 保育方針の理解
  • 成長機会の提供
  • キャリアパスの明確化

園経営者・管理者ができる改善策

1. 処遇改善の取り組み

給与・待遇面の向上

  • 給与水準の見直し
  • 各種手当の充実
  • 昇給制度の改善
  • 退職金制度の整備

2. 労働環境の整備

働きやすい環境づくり

  • 業務の効率化・システム化
  • 適正な人員配置
  • 有給取得の推進
  • 残業時間の削減

3. 人材育成とキャリア支援

職員の成長をサポート

  • 研修制度の充実
  • メンター制度の導入
  • キャリアアップ支援
  • 資格取得援助

保育士の離職を防ぐ成功事例

A保育園の取り組み

ICT活用による業務効率化

  • 保育記録のデジタル化
  • 保護者連絡システムの導入
  • シフト管理の自動化
  • 業務時間の30%削減を実現

B保育園の職場改善

職員の声を反映した改革

  • 定期的な職員面談の実施
  • 職場環境改善委員会の設置
  • 柔軟な勤務形態の導入
  • 離職率を半減させることに成功

C保育園のコミュニケーション改善

チームワーク向上の取り組み

  • 月1回のチームビルディング
  • 感謝の気持ちを伝える制度
  • 新人サポート体制の強化
  • 職場満足度の大幅改善

保育士不足解消に向けた社会的な取り組み

国の施策

処遇改善の推進

  • 処遇改善等加算の拡充
  • キャリアアップ研修制度の導入
  • 保育士等確保対策の実施
  • 保育士修学資金貸付事業

自治体の独自支援

地域ごとの取り組み

  • 家賃補助制度
  • 保育料減免制度
  • 保育士復職支援研修
  • 子育て支援の充実

保育士として長く働くためのキャリアプラン

ステップ1:基礎スキルの習得(1-3年目)

新人期の重点項目

  • 基本的な保育技術の習得
  • 子どもとの信頼関係構築
  • 保護者対応スキルの向上
  • チームワークの理解

ステップ2:専門性の向上(4-7年目)

中堅期の成長ポイント

  • リーダーシップの発揮
  • 後輩指導の経験
  • 専門分野の深化
  • 園運営への参画

ステップ3:キャリアの多様化(8年目以降)

ベテラン期の選択肢

  • 主任・園長への昇進
  • 専門分野での独立
  • 保育関連企業への転職
  • 研修講師・コンサルタント

まとめ

保育士の離職率はなぜ高いかという問題について、データに基づいて詳しく解説してきました。

離職の主な原因は以下の3つです。

  • 給料の安さ(61.6%)
  • 仕事量の多さと労働時間の長さ
  • 職場の人間関係の問題(38.0%)

しかし、適切な対策を講じることで、保育士として長く働き続けることは十分可能です。

個人レベルでできること

  • スキルアップと資格取得
  • ストレス管理と体調管理
  • 良好な人間関係の構築

職場選びで重要なこと

  • 労働条件の詳細確認
  • 実際の職場環境の見学
  • 園の理念と方針への共感

保育士は子どもたちの未来を支える素晴らしい職業です。適切な環境と工夫があれば、やりがいを持って長く続けられる仕事でもあります。

現在離職を検討している保育士の方も、これから保育士を目指す方も、この記事を参考に自分らしいキャリアを築いていってください。

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